のせでん探訪 森編

光風台駅

駅を出るとすぐ目の前にそびえ立つ、高層住宅。

昭和の終わり頃に建てられたものだろうか・・・。

新しく開かれた街、そんな印象だった。

しかし、平成を経て、今は令和。新しいという言葉を当てはめるのは違っているのかもしれない。

駅前から上がっていくエスカレーターに導かれて、進んでい く。 途中から、階段のみちに切り替えて、上り切ったところの左手側には、大きな橋があった。その先には学校があるのだろうか、 子どもたちが何人か連れ立って橋を渡り、こちらに向かっていた。 右手側は、先ほど見えていた大きな建物の駐車場。それを過ぎると、一戸建ての家が立ち並ぶ、住宅街。 なんとなく、昭和の名残のある街並み。そして、開発された街ならではの、大きなスーパーマーケットの赤い屋根が見えた。

新しく開かれた街に来ると、なんとなく他人行儀な感じがす る。 住人によって少しずつ作り出された街ではなく、計画的に作られていく様は、便利であるのだろうけれど、人と人とのつながりも、ある一定の形式に則っていなければならない、そんな感じがする。 とは言っても、もうおそらく30年以上もたつこの街は、それはそれで、住む人たちにによってつくられた歴史も持っているのだろうな、そうと思いながら駅への道を戻っていった。

ゆさゆさと風に揺られていた黄花コスモスを眺めつつ、先ほど

登ってきたエスカレーターを一気に駆け下り、駅へと戻った。

笹部駅

光風台の駅とわずか一駅違うだけで、駅前の風景は全く別世界だった。田園風景の広がる笹部駅。無人の小さな改札を出ると、線路の向こう側へわたる陸橋が見えた。

迷うことなく、その陸橋を渡り、線路の向こう側の世界へと足を進める。上から線路をながめ、単線であることに初めて気づく。光風台はたしか、線路は二つあったはず、と一瞬、そんなことが頭をよぎった。

陸橋を渡りきると、視界を遮るように、進行方向へ進む急な階段、そして左手側は緩やかな階段の細い道があった。ちょっと回り道っぽい感じのする左のゆるやかな階段の方を選んで、進んでみる。ぐるりと回るようにして、階段が続く。少し大きなお屋敷風の家を右手に階段を上りきると、小さな空き地があり、そこには忘れていくには大き過ぎるなぁと思える子どもの遊具が残されていた。

一戸建ての続く住宅街だった。どこか懐かしい感じがしたのは、子どもの頃に住んでいた街並みと似ていたからかもしれない。

ひたすら続く住宅街、この辺りの人はどこで買い物をするのだろうかと、ちょっと不思議な思いで巡っていたが、家々の合間から先ほどの線路の反対側の田園風景が広がっており、日々この景色を見ながら過ごす毎日もいいものだなあと感じた。

一回りして、たどり着いたところは、最初の別れ道となっていたもう一つの階段を上りきった場所だった。小さな丸い石垣の上に、雑草が生えないためにだろうか、カバーがかけてあり、それがなんとも言えず存在感を持っていた。何かの跡なのだろうか、これはずっとこのままなのだろうか、と気になりつつも駅へと向かう陸橋へと足を進めた。

陸橋から、電車を見送りながら、階段を降りてくると、先ほどは気づかなかったが栗のイガがたくさん落ちていた。中身が残っているものはないかなと、少ししゃがんでみたが、今は夕方の時間帯、そのようなものは残っているはずもなかった。

そのまま、田園風景の続く先ほどとは反対の方向を散策してみる。

ながれの穏やかな川を渡ると、田んぼの広がる田舎の風景になる。森に囲まれた昔ながらの農家らしき家々。川の流れる音、風に揺れる木々のそよぐ音、鳥の声。流れている時間感覚の違いを実感する。

少し、長居をしてしまったので、次の電車を逃さないよう、駅への道を急いだ。

鼓滝駅

改札を出てすぐ右(東側)に出てみると、線路と並行して、住宅街へ続く坂道が見えた。学校がえりの子供が一人、その坂道を上がって家路(おそらく)についていた。

そして、左手側は小さな2〜3件の飲み屋のある路地。地元のお父さんたちが常連客の店なのかな、という妄想が頭をよぎる。その裏手には溝というか小さな川が流れている。

坂の方へと歩みを進めたい気持ちもあったのだが、坂の上まで行って戻って来るとかなり時間を費やしそうだったので、断念し駅の方へ戻る。

踏切を渡って、駅前の道をしばらく進む。車の量が多いなあと思いながら、いくつか店の立ちぶ通りを歩いていくと、右手側に大きなショッピングセンターがあり、大きな幹線道路に出た。道路の向こう側、森をバックに建っている大きなマンションが印象的だった。

駅へ戻る道すがら、ある建物の2階へつながる階段を見つけた。階段を上がると予想通り、先ほど登っていくことを断念した坂の向こう側の街並みが見渡せた。山の上まで続くたくさんの家々。窓からの景色はどんなだろう・・・と想像しつつ、しばらく眺めていたが、夕暮れの時間がせまりつつあったので、小さな駅前の旅を終えることにした。