プログラム・ノート

※このページはパフォーマンス時刻17時から翌朝5時までのみ公開されています。


本作品の制作にあたり、パフォーマーはそれぞれがターミナルである、妙見口駅、もしくは日生中央駅で線路が途切れた先に赴き、あらかじめ「空想の駅」を設置しています。「空想の駅」は、その地の音を録音し、「サウンドスケープ」に収めることで設置が完了します。
空想の駅を設置するだけではなく、パフォーマーでくまなく能勢電鉄の駅を探索するワークショップも事前に開催して、能勢電鉄や、沿線地域との関わりを深めてきました。

のせでんアートライン、10月30日~11月23日の会期中の土日祝と、いくつかの平日に、パフォーマーは、17時頃に川西能勢口を出発する、ある特定の電車を妙見口駅に呼び寄せるパフォーマンスを行います。
パフォーマンスでは、妙見口駅に到着した電車を「空想の駅」へと、音の力を使って導き、ターミナル駅のステーション・チャイムは、ゆっくりと妙見口駅を離れ、さらに遠くの場所へと、終着点を移動させていきます。

「空想の駅」の場所を見つけることができる人、「空想の電車」を走らせることができるのは、私たちパフォーマーではなく、観客であるあなたたち自身なのです。観客の想像力が客車となり、好奇心が動力となり、空想の電車は進んでいきます。

以上がストーリーですが、このパフォーマンスにはもう一つの目的があります。

それはストーリーを読み解くことではなく、このパフォーマンスを通して、耳を澄まして日常の楽しみの中に、ささやかな喜びを見つける経験をしてもらうことです。
妙見口駅は、自然と人間社会の混ざり合う、静かなエリアです。LinNeやステーションチャイムのささやかな音は、電車の運行音に紛れても、ほんの微かに聞こえてきます。(あるいはほとんど聞こえないと感じるかもしれません)
どちらに捉えるかで、本作品の印象も随分かわってくるのではないかと思います。

「聞こえない音を聞く」あるいは「聞こうとしないと聞こえない」音を象徴すべく、風が吹いてもほとんど聞き取ることのできないステーション・チャイムの音色を増幅した音声、そしてパフォーマーたちが設置した「空想の駅」のサウンドスケープ、そしてけんけら炭の音色が、待合室には展示されています。

もし、もっとよく聞いてみたいと思ったら、ぜひ、もう一度待合室を訪れ、パフォーマンスを眺めるか、あなた自身が線路の先へと進み、耳を澄ましてみてください。