呼応するターミナル “Myoken Resonance”

日常に潜むミクロな世界には、拡大することで大きな喜びを与えてくれるものがたくさん潜んでいます。
しかし、大きな刺激が溢れている喧騒の中で、そういったミクロな小さな刺激は
まるで森の中の草木、小さな虫のように
意識して「発見」しないと、出会うことは難しいのです。

普段は大きな音を立てて走る電車が、
大きなカーブを曲がりながら、精一杯息を潜めて、
ゆっくりと到着する妙見口駅は、里山への入り口。
人間と自然が長い時間をかけて築き上げてきた里山では
普段都会でも聞いているはずの風の音や虫の声、鳥の声が
まるで拡声されたかのように鋭く飛び込んできます。

同じように、都会では背景音のように聞き流されている車の騒音がひときわ目立ちます。
軽トラ一台通っただけでも、ずいぶんけたたましく響くのです。

日常と別の日常は、非日常と別の非日常。
私たちはこの展示とパフォーマンスで、そんな二つの世界、
あるいは様々な「ターミナル」を結びつけることによって、
ありとあらゆることに対する「好奇心」の価値について、迫っていきます。

妙見口というターミナルと、その先の世界との結び付きを強調することで
コミュニティとアートを、より深く結びつける試みを行います。
空想の電車というストーリーと、金属とけんけら炭が奏でる音色を使って。

私たちは、耳を澄ますことで、いったい何を発見できるのでしょうか?

ステーションチャイムとけんけら炭について

妙見口駅の乗降ホーム、南東側の対岸に、15の「ステーション・チャイム」を展示しています。
ステーション・チャイムは、風や振動によって音をたてる、風鈴のような創作楽器です。
能勢電鉄の駅の数と同数用意されており、それぞれの駅へのオマージュとも言える音色を持っています。
このチャイムの制作には、商業品であるステンレス製のパイプと、「けんけら炭」が使われています。
妙見口駅の先にある里山地域の特産品である、「菊炭」を生産する際に、副次的に産まれるこの「けんけら炭」は、
火が熾る時に、とても美しい音色を奏でます。
静かな場所で、よく耳を澄まさないと聞こえない、この音色。今回の展示・パフォーマンス制作の出発点ともなっています。

LinNeについて

パフォーマンスでは、京都の老舗、南條工房が手作りで製造している小型の佐波理おりん「LinNe」を使用しています。妙見口周辺の「里山」と呼ばれるエリアは自然と人が共存するエリアで鳴り響く、この「LinNe」の凜とした音色は、自然と人間の調和を連想させます。